《MUMEI》

「克哉さん…ダメです…僕…」

だって僕…男だし…。

こんな奴だし…。


「どうしたんだ…」
「…貴方みたいな…立派な人に…僕なんかじゃダメです」


愛してるけど…。

愛してるからこそ…。

貴方には普通に幸せになってほしい。


「僕…こんなダメな奴だし…貴方とは住んでる世界が違い過ぎます…」

克哉さんに貰った指輪を返そうと、それに手をかけた…けど…。


外せなかった…。


これを外してしまうと…克哉さんともう二度と会えないんじゃないか。

そう思うと手が震えてきて…。


このまま消えて、死んでしまうんじゃないかと思えた。



「ッ…ぅう……」
「アキラ…今の気持ちを素直に言え」

そんな事言われても…。

もう、目の前がクラクラしてきて身体に力が入らなくなって…膝からガクっと崩れ落ちると克哉さんに抱えられてしまっていた。

立ち上がろうとしても、緊張からか足にも腰にも全然力が入らない。

こんな時に、なんで僕はいつもこうなんだろう…。


「僕には…荷が重すぎます……僕じゃ…あなたに釣り合いません」

今すぐこの場を立ち去って、全て何もかも、楽しかった思い出も全部忘れてしまいたかった。

だけど、腰抜けな僕は動けずに克哉さんの腕にすがり、今にも失神してしまいそうになっていた。


いや…このまま失神してしまいたかった。


「大丈夫、私には軽い荷物だ」

突然、そう言って克哉さんは僕を見てニヤッと笑ったかと思ったら、いきなり身体がフワッとなって、僕は軽々と抱え上げられてしまっていた。

「あ…そッ、そういう意味じゃなくて///」

克哉さんは僕を肩に担ぎ、シャッターは閉まっているけど街頭で明るい通りを練り歩く。

人通りはほとんど無いものの、たまにすれ違う人に見られて顔が真っ赤になるくらい恥ずかしかった。

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