《MUMEI》
諦めきれないキモチ
.


わたしが顔をあげると、彼は机の上のプリントを数枚取りながら、言った。


「手伝ってやるよ。どーせヒマだし」





……………え?





突然の申し出に、わたしは面食らって言葉が出て来なかった。

蒲生くんは素知らぬ顔で、黙々とプリントをホチキスで束ねている。

わたしは彼の手元を見つめながら、尋ねた。


「………なんで教室に戻ってきたの?」


わたしの問い掛けに、蒲生くんは作業を続けながら、「んー?」と曖昧に唸った。


「忘れ物取りに来た」


さっぱりとした理由だった。

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