《MUMEI》 相合い傘. ふたりで作業をしたので、思ったよりも早く終わった。 まとめたプリントを、職員室にいる担任に返したあと、わたしたちは昇降口へ向かう。 「あ………」 靴を履き終えた蒲生くんは、空を見上げて声をあげた。 わたしは彼を見る。 彼は空を見つめたまま、言った。 「……雨だ」 その台詞に、わたしも空を見た。 たくさんの雨粒がしとしと地上に降り注いでいる。 わたしは蒲生くんの隣に並び、呟いた。 「天気、悪かったもんね……」 どうやら、わたしの予感は的中したようだ。 蒲生くんはまだ、空を見つめて「やべー」と呟いた。 「傘持ってねー……」 わたしは蒲生くんの横顔を見た。相変わらず、整った顔立ちだった。 . 前へ |次へ |
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