《MUMEI》 . ぼんやりと観察していると、 Tシャツに着替えた蒲生くんが、マグカップをふたつ、両手に持って、部屋に戻ってきた。 ハッとするわたしの顔を見て、彼は笑う。 「なに、その反応。もしかして、俺の部屋物色してた??」 カップをローテーブルの上に置きながら、「残念ながら、エロ本は隠してますよ〜」と呑気に言う。 わたしが、違うもんッ!!と大きな声で否定すると、彼は可笑しそうに笑った。 蒲生くんは、ゆっくりベッドに腰掛ける。 そして、急に黙り込んだ。 沈黙が部屋を覆う。 なんとなく、気まずい。 そして、恥ずかしくなってきたわたしは、顔を俯かせる。 …………家まで送って、即バイバイのはずが、 誘われたからって、家の中に上がり込んで、 わたし、なにやってんだろ…………。 . 前へ |次へ |
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