《MUMEI》

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しばらく間を置いて、

蒲生くんが「小早川さぁ……」、躊躇いがちに言う。





「もしかして、あの夜、『なにかあった』方が良かったの?」





その台詞に、わたしは固まり、

そして、顔が熱くなった。

弾かれたように顔をあげ、蒲生くんを見つめる。


「なに言って……!!」


否定しようとしたのを、蒲生くんが遮る。


「だって、怒ってる理由、もうそれしか思い付かねーんだもん」


悔しいけど、図星だった。

返す言葉が見つからなくて、わたしは黙り込む。

蒲生くんは少し間を置き、つづけた。


「あの夜は……まえ話した通り、小早川がものすごい酔っ払ってて、カラオケを出たあと、『家まで送れ!』ってわめき出してさ」


改めて語られる自分の醜態に、恥ずかしくなる。

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