《MUMEI》
・・・・
 「・・・何が起きた」
 身動きひとつ、詠唱すらしていない仮面の男の前で昏倒してしまったエドを見て、カイルは思わずそう零していた。
 無詠唱魔法や魔術という可能性は低い、エドを卒倒させるほどだ。それほどのものを無詠唱に出来る人間はいない。しかし先天的な魔眼保持者ならば話は変わる。
 そもそもあれの効果範囲は、人数の制限はあるのか。
 カイルにとってこの敵は最悪の相性にあった。カイルが得意とするのはあくまでも、物理的な戦闘なのだ。魔法や魔術であろうと、それが物理的な攻撃であれば迎え撃つ手段はあり、回避も可能になる。
 だがあれは違う。回避不能であり、そしてカイルの魔力抵抗は低い、くらえば一たまりもないのは彼自身がよく理解していた。

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