《MUMEI》
夜の営み
それでも、普通の毎日が過ぎていく。
過ぎる1日の終わりには、あの手が伸びる。

夜の営みと称しているが、単に男のはけ口、私の身体はゴミ箱なだけ。精子を捨てるには、ちょうど良い、ゴミ箱なのだ。

今夜も隣から、生温かい、しかし、どこか、冷たい手が伸びてきた。

私の心臓は、不快なドキドキ音で高鳴った。
例え、優しく断っても、その後、主人は、いじけた子供の様に、不機嫌になる。最悪、会話すらしない日が続く。

「かず‥」
そう、宏志がつぶやく。

その一言には、
〈和子、今日はやらせてよ、入れさせてよ、アイリも、寝たし、いいだろ?早くやりたいよ、胸触らせて、精子、出させて〉

そんな、声無き、声に聞こえる。

その、ひんやりとした手が、私の胸に触れた。

心臓の不快心拍がわかってしまうだろうか?

彼の手首をそっと、とらえた。

布団から胸までのわずかな時間に、不快心拍と戦いながら、言い訳を考える。

〈ホントに疲れてるから、私の体は、無反応になる、濡れない、だから、したくない、やりたくない、だから、イヤ!その、ひんやりとした、手で触らないで!〉

そう、叫びたかった。

「ひろし、ごめんね、疲れてしまってるから、明日でいい?もう、睡魔に勝てない」

そう、優しく謝った。

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