《MUMEI》 . 蒲生くんは、わたしを見つめ、わたしが考えていたことと、同じことを呟いた。 「俺は、小早川のこと、好きだよ」 わたしは言葉をなくす。信じられなかった。 蒲生くんは照れ臭そうに、わたしから目を逸らし、小さくため息をつく。 「ホントはこのまえの帰り………店で話してたとき、言おうと思ってたのに、なんか、小早川がいきなし怒りだしたから……」 わたしはハタッと思い出す。 あの時、確かに蒲生くんはわたしと居ると『全然緊張しない』のだ、と話した。 けれど、それはわたしのことを『オンナ』として見ていないという意味が込められているのだと、勝手に早合点していた。 …………あれは、 誤解、だったってこと? 自分のはやとちりに、気恥ずかしくなる。 . 前へ |次へ |
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