《MUMEI》

「そうか。それなら先へ進もう」
「進むのはいいけどさ、足はどうするよ? まさか歩いていくわけにはいかないだろ」
ケンイチの言葉に織田はなんでもないように答えた。
「レンタカーでも借りればいい」
その答えにユウゴとケンイチは思わず顔を見合わせる。
「レンタカーって……。借りられるのか?俺の手配写真、回ってるはずーー」
「問題ない」
ユウゴの言葉を途中で遮って織田は言う。
ユウゴは意見を求めるようにケンイチを見たが、彼は肩を軽くすくめて「問題ないってさ」と笑った。
なにが問題ないのかわからないが、織田には自信がありそうだ。
仕方なく、ここは彼に任せることにしようとユウゴは織田の後に続いた。
三人は適当に見つけたレンタカー店に入った。
「いらっしゃいませ」とカウンターの女性スタッフが愛想よく笑顔を向けてくる。
ユウゴはなるべく顔を見られないように入口の近くで待つことにした。
そんなユウゴのことを気にした様子もなく、女性スタッフは織田と会話を始めた。
ケンイチは織田の横について一緒に話を聞いている。
その様子を見ながら、ユウゴは思った。
あれからすでに半日は経っている。
なぜこの二人はいまだに手配されないのだろう。
二人の顔は奴らに知られたはずである。
身元を探すのに手間取っているのだろうか。
それならばこちらにとって好都合である。
今のうちに目的地まで行ってしまえばいいのだ。
しかし、もしその途中で手配されてしまえば、すぐに足がつくだろう。
たしかレンタカーは車両の場所がわかるような装置がついていたはずだ。
そこまで考え、ユウゴは思考を中断した。
どうやら契約が終わったらしい。
織田に促されるまま、ユウゴは店の外に出た。

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