《MUMEI》
サイテー
「ネットで彼らの組織を知って、仲間になった。武器の使い方や、怪我の手当ての仕方も習った」
淡々と彼女は話す。
「そして、この町がプロジェクトの対象になった。あたしたちは戦った。そして、あたしは思ったの。こんなの意味ないって」
「……どういう意味だ?」
「いくら警備隊相手に戦っても、あいつらはまだ何千人も待機してる。比べてあたしたちはたったの数十人。勝てるわけないじゃない」
「でも、由井たちは勝てると信じて、戦ってただろ」
「馬鹿だったのよ。人を助けるために自分が死ぬなんてありえない。確かにあたしは婚約者を殺されたけど、あたしはそのために自分を犠牲にしようとは思わない。活動に参加してみて、その気持ちを再確認したわ」
「……それで、由井たちを売ったのか」
「そう。あたしだけは助けるっていう条件でね。あんな組織にいたら、遅かれ早かれ殺される。あたしは死にたくないの」
「……それは、お前だけじゃないんじゃないか?」
ユウゴは静かに言った。
ミサは挑むような目つきで見返している。
「何が?」
「由井も、あそこにいたじいさんも、ガキ共も、みんな死にたくなかったんじゃないか?それでも、自分が味わったような悲しみを他の誰にも味わせたくないから、だから、戦ってたんじゃないのか!!それを、お前は……」
「そんなの、あたしに関係ない。あたしは、あたしが無事ならそれでいいの」
「……サイテーだな。お前」
ユウゴの言葉に、ミサはフッと笑った。

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