《MUMEI》 . いつの間に、こんなに大人びたのだろう。 わたしが知ってる将太は、 あどけなくて、シャイで、 ヒューと一緒に無邪気に遊んでて、 その、笑顔が、 なによりも眩しくて………。 でも、さっきまで一緒にいた将太は、 全然、違った。 立派な、男の顔をしていた。 今までのキミの姿は、 単なる一面に過ぎなかったの? 他の、キミは、 一体、どんなふうに話して、 どんなふうに笑って、 どんなふうに見つめてくるの? もっと、知りたい。 もっと、ずっと、 キミの知らない顔を、たくさん………。 そんな欲望が、生まれたあの日。 わたしは、ようやく、 進むべき道を、 見つけられたような気がしたんだ。 将太が立ち去ったあと、 茂みで遊んでいたヒューが、わたしの所に戻ってきた。 ヒューはやたら周りをキョロキョロしていて、 それは紛れも無く、将太の姿を探していたのだった。 わたしはヒューの頭を優しく撫でる。 ヒューは賢しげな目でわたしを見つめた。 しっかりと、その視線を受け止めながら、 呟いた。 「そろそろ、帰ろうか……お母さん、待ってる」 ヒューは理解したのかどうかわからないが、ただ、尻尾を左右に振った。 . 前へ |次へ |
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