《MUMEI》

「七生はリサの一部だ。俺の愛のカケラを七生が持っている。」

俺の七生は修平さんの七生で、瞳子さんの七生でもあるんだ。


「リサさんを、愛してたんですね。」


「今もね。」


「じゃあ……鮎子さんは?」


「鮎子とは別の愛だよ。同じようには愛せない。」

修平さんの言うことは難しい。愛は一つしか知らないから……。


「なんか、狡いですね……」


「そうだね、私は子供だから、甘えたいし我が儘も言いたいんだよ?でも愛しているからこそなんだ。そんなだからかな……リサが俺を置いていったのは。」


「それ……違います。」

頭の中で、鮎子さんの言葉が思い出される。


「何か聞いたんだ。」

修平さんの眼光に射貫かれる。


「だって、鮎子さんは、リサさんを憎んでました……リサさんがそれだけ愛してたからでしょう?」

口が、止まらない。


「鮎子が?」

修平さんはお父さんの表情から変わる。
言っちゃいけいことなのに、自己嫌悪だ。


「リサさんは七生を一人で育てようとしてました……、修平さんに頼らず七生を育ててあげることがリサさんの愛だって、七生のおじさんが言ってました。あと、修平さんには勝てないって……好きだからこそ離れたんです。」

愛人として生きるより、愛しながら一人で七生を育てる道を選んだんだ……
どうしても感情移入してしまう。


「そうなの?」


「俺の推測でしかありませんが、修平さんが忘れなかったようにリサさんもずっと思い続けていましたよ。離れることで深まる愛もある……。」

俺はそうだと思いたい。


「逆に二郎君に慰められちゃった。」

修平さんが頭を抱えて指の隙間から俺を見た。
指の隙間から、七生の瞳が見え隠れする。


「……そんな、俺はただ思ったこと好き勝手話しただけです。」


「ううん、
リサに言って貰えたみたいで嬉しかった。」

軽く、手が重なり、柔らかい触れ合いが擽ったい。





「ああ、楽しかったな!」

いつの間にかコーヒーカップは止まり、七生が俺達の間に睨みをきかせていた。

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