《MUMEI》

「さんきゅ」

俺は有りがたくそれを受取り、アイスの袋を破き、中身を取りだし口に入れた。

「なぁ、お前さ。カノジョとか居ねぇの?」

突然兄貴が始めた突拍子のない話題に、アイスを口から落とすかと思った。

「はぁ?何だよ突然。居るわけねぇじゃん。」

俺が言うと、兄貴は小さく溜め息を吐いた。

「俺だってさ、こんなこと言いたくねぇけどさ」

そこで、兄貴は一度言葉を切って、もう一度小さな溜め息を吐く。

それから、言葉の続きを紡ぎだす。

「そろそろ、良いんじゃねぇ?お前が過去に囚われるのも分かるけどな。あれからもう、四年経った。」

兄貴が何を言いたいかは分かる。

「………」

だから、何も言えない。

「あの子もさ、お前がずっと立ち止まったままなこと、悲しむと思う。」

兄貴もそれは分かっているのか、そのまま話をすることを止めない。

「兄貴悪いけど、そんな話ならもう俺き……」

……きたくない。

分かるけど、聞きたくない。

「お前はこの四年間、ずっとあの子を想い続けてきた。」

でも、兄貴は俺に最後まで言わせてくれない。

「俺は……、まだ好きだから。あいつのこと。」

きっぱりと言い放つ。

「志遠……」

心配してくれてるのは分かる。

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