《MUMEI》
通じない会話
「 …

これ、

… … くれ」


言いながら、金髪ヤンキーは、既に何処からか取り出した袋に衣装を入れ始めていた。


(…そんなの)


「ダメに決まってるだろう。返せ、早く」

「…」


金髪ヤンキーは


何故か、固まっていた。


「…返せ」

「…」


俺と金髪ヤンキーは、睨み合った。


その時


チャチャチャチャーッチャチャチャチャチャチャチャー


(…何だ? この音)


酷く場違いな、軽快なメロディーが教室内に響いた。


そして、次の瞬間


金髪ヤンキーは、ものすごい速さで教室を出ていった。


(しまった!)


「…っ、待て!」


俺も慌てて教室を出た。


(速っ!!!)


金髪ヤンキーの背中はかなり小さくなっていた。


「おい、待て! 衣装返せ!」


俺の声はこの三年間でかなり遠くまで響くようになっていたが


それでも金髪ヤンキーは止まらなかった。


(逃がすか!)


足に自信のある俺は、全速力で金髪ヤンキーを追いかけた。


幸い、金髪ヤンキーは目立つので、見失う事は無かった。

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