《MUMEI》
逃亡先
金髪ヤンキーと俺との距離はだいぶ縮まってきていた。


一瞬だけ振り返った金髪ヤンキーは、かなり驚いていたが


それでも足は止まらなかった。


よく見れば金髪ヤンキーは土足で、そのまま校舎の外に飛び出していく。


(仕方ないな)


俺は、上履きのまま、それを追いかけた。


(ん? この先は…)


てっきり正門か裏門方向に行くと思っていたのに


金髪ヤンキーは、そのどちらでもなく


何故か、中庭に向かって走っていた。


中庭には志貴と


金髪ヤンキーと一緒にいたお嬢様風の女性が見えた。


「恭(きょう)!遅い!」

「祐也!?」


叫ぶ二人と俺達との距離は近付いていた。


「ごめ〜ん、真白(ましろ)ちゃん!

はい、パス!!」


金髪ヤンキー


恭が投げた、衣装が入った袋は美しい放物線を描き


「「…え?」」


何故か


志貴の手元にすっぽりと収まった。


呆然とする俺と志貴をよそに


「このノーコン!」

「ご、ごめんなさいぃ!」


恭は、小柄なお嬢様


真白と呼んだ、おそらく彼女にものすごく怒られていた。

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