《MUMEI》

「香坂さんどーでした? その頃──」





こーちゃんが訊いたら。





「そうね──私もその頃が一番楽しかったわ──」





懐かしそうに、香坂さんがそう答えたから‥ちょっとビックリした。





「そうなんですか‥?」

「ええ。だって──蜜花ちゃんが羨ましかったりするもの」

「私が‥?」





そんな事を言われたのは初めてで。





もう少し──このままでもいいような気がした。





「──だから蜜花ちゃん、ちゃんと青春満喫してね」

「──はい」





今を楽しむ──それって、凄く大事な事なんだよね。





写真みたいに、時間は止まってくれないんだから──。

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