《MUMEI》

「だって‥これ先生のじゃ」


「いいから食えって。俺はちゃんと食って来たし。──他のやつら来ちまうぞ?」


そう言われて、1口かじる。


「なっ、結構イケるだろ?」


「‥‥‥」


「鹿瀬? おいっ‥おま‥泣いて‥!?」


「いえっ、ち‥違‥」


──嬉しい。


何でこんなに嬉しいんだろ。


「っと‥マズかったら無理して食うなよ‥?」


「──ぃぇ──」


「ん‥」


「その逆です」


「んじゃあ‥何で泣い‥」


「そっ‥それは気のせいです‥」


どう言い訳したらいいのか分からなくて、俯いた。


「ほんとに大丈夫か?」


「はいっ‥大丈夫です」


「──そっか! じゃあ授業頑張れよなっ」


ポンッと私の肩を叩いて、先生は教室を出て行った。

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