《MUMEI》
▽
結局まともに夜景見たのは最初だけ。
金欠の原因になった気張った服もほとんど着れてなかった。
俺を胸に抱きながら誠は幸せそうに眠っている。
やっぱり気になって、そっと誠の腹を触るとそこはすっかり凹みきっていた。
「なんだかなーもうばかだなあ…」
飢え死にしてもしらねーぞもう。
▽
目覚めると辺りはすっかり明るくて、隣で一緒に寝ていた筈の誠は、ソファに座りながらボクサーパンツ一枚で煙草を吸っていた。
▽
「おはよーう真依」
「ンッ…、ん…」
短いキスの後、俺は誠から煙草を奪って一口吸い込んだ。
「は〜、めっちゃうまい…………、あ………」
俺の薬指にはまるシルバーのリング…。
「これ…」
「外して中見てみな」
誠はカッコイイ笑顔でそう言うと、バスルームに消えていった。
外して中を見ると、俺と誠のイニシャルが入っていて、ついでにILOVEYOUなんてのも入っていて!
…
ああ…
ああ…
あーもう幸せ!
誠大好き!大好きだよ!
誠カッコイイ…
大好きッ!
あーもう俺なんかでよけりゃいくらでも抱いていいよ。
俺はリングのはまる手を胸元でギュッと抱きしめて、そして唇につけて、
幸せいっぱいの気持ちでバスルームに向かった。
▽
シャワーの音がするバスルームの扉を俺は元気に開ける!
だってもう抱きつきたくてたまんないんだもん!
「まこ……」
ザー……ザー…
「まことおッッッ!!!」
まるでカエルが車にひかれたような格好で…
誠は倒れていた。
ザー…ザー…
「なんで力抜けたんだろ〜…」
ザー…ザー
「そりゃ抜けるだろ…飯も食わねーで、あんだけ動いて出してたら…」
ザー…ザー…
「まいっち」
「ん?」
ザー…ザー…
「…肉食いたい…」
ザー…ザー…
「…はあ…」
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