《MUMEI》
蘇り始めた記憶
所々、靄がかかった記憶ではあるが、仕方ない。
しかし、新しく分かった事がいくつかあった。
「つまり、リョウはその男性の…えっと‥血を吸っちゃったってわけだよ、ね?」
話しの流れからしてそれは明らかだったが、加奈子も、そしてリョウ自身にもあまりにショッキングな出来事だ。
だから言うのに少し躊躇してしまった。
「いいよ、別に。本当の事なんだし、ズバッと言ってくれて。」
そう返してくるリョウの顔は、案の定暗かった。
自分の意思を無視して、人を殺してしまうのだ
無理も無い‥
「後、わかんない事があるんだけど。」
「何?‥つっても俺自身わかんねぇかも。」
「まぁ、一応聞く。リョウが…その‥アレになるのって満月の夜じゃなかった?」
『悪魔』という言葉は言いたくなかった。
いくらズバッと言って良いからと言われても、これだけは無理…
それを口にしてしまえば、“友”でなくなる気がしたから…
「多分、満月が近い証拠…だと思う。」
「そっか。」
きっとそう遠くはない。
男の手がそう警告するように、また鋭く光る。
「それともう一つ。」
これが加奈子の最大の疑問だった。
「その女性は何で殺されたってわかるの?」
まさか…リョウが?
考えたくなかったが、考えてしまうその疑惑をあえて口に出さないようにした。
本人から聞きたかった。
「俺じゃないぜ?」
また顔に出てたと言わんばかりのタイミングでリョウが答える。
「俺じゃない。その女性は…
口止めの為に殺されたんだ!!」
今までゆっくりだったリョウの口調が急に強くなった。
加奈子はそれにビクついた。
「な、何!?いきなりどうした…」
「思い出したんだよ!!」
リョウは加奈子の両肩をガシッと掴む。
もちろん爪には気をつけて。
興奮するように目を見開いて話す。
記憶が戻った事がリョウは嬉しかった。
それが残酷な真実でも…
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ
携帯小説の
(C)無銘文庫