《MUMEI》

『大好きな志遠へ』

そこから手紙が始まった。俺は、一瞬、息が出来なかった。

“大好きな志遠”

その文字を見た瞬間、涙が溢れるかと思ったけど、グッと堪えて、先を読み進める。

『志遠、ハタチの誕生日おめでとう。
これでもう志遠も大人の仲間入りだね。お酒とかも、もう飲んだのかな?あんまり飲みすぎないでね。

ところで、あなたがこの手紙を読んでいるということは、私はもうこの世にはいないんだね。
ごめんね。一緒に誕生日祝ってあげられなくて。

ねぇ、志遠。志遠は覚えてるかな。

私達が出会ったあの日のこと。』



あぁ、覚えてる。
忘れてねぇよ。

忘れられるわけねぇじゃん。

だってさ。
俺、お前のこと、すっげぇ好きだったんだ。



なぁ、陽和。謝らないとといけねぇのは俺の方なんだ。


ごめんな。
傷付けてばっかで本当にごめん。

俺はお前に、陽和に何かしてやれた?



出会った日の事から一つずつ、俺の頭の中で陽和と過ごした記憶が溢れてくる。

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