《MUMEI》

すると廊下に出ていた生徒や、別のクラスに行っていた生徒がぞろぞろと教室に戻ってきて、割と静かだった教室が一気に五月蝿くなる。

暫くすると本鈴が鳴った。


ガララ………

乾いた音がして、教室の引き戸が開かれた事がわかる。

「みんな静かにー」

担任の小笠原が入ってきて、五月蝿い児童達を宥める。

俺は、窓の外から視線をはずし、担任の小笠原の方を向く。

「今日は昨日も言った通り、転校生を紹介します。」

教卓の前に立っていた小笠原が、引き戸の前まで移動する。

「じゃあ一宮さん、入ってきて。」

小笠原に言われ、入ってきたのは女の子だった。

それも、芸能人やモデルみたいに整った顔立ちの女の子。

小学生とは思えないくらい綺麗な少女。

クラスに、ザワザワと波紋が広がっていく。

「じゃあ一宮さん、軽くでいいから自己紹介お願い出来るかな?」

少女はコクリと頷くと、黒板の方を向き、カッカッと綺麗な文字で名前を書いていった。

「えっと、いちみやひよりです。まだまだ分からない事だらけなので、色々教えてください。」

屈託なく笑うその顔は、綺麗過ぎる容姿に不似合いに思えるほど無邪気だった。

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