《MUMEI》 「ありがとう、一宮さん。あなたの席は、伊山くんの隣ね。」 そう言って小笠原が指差したのは俺のとなりの誰もいない席。 「はい。」 そう言って、俺の方に近付いてくる。 「あの、伊山くん。よろしくね。」 俺の近付くなオーラを感じたのだろうか。 どこか気まずそうに、彼女は言った。 「あぁ。よろしく」 適当に相槌をうつようなノリで、無愛想に言い放つ。 無愛想な俺の態度に、彼女は怒っただろうか。と思わないでもないが、そんなことどうでもよかった。 ガガッ 椅子を引き、隣に彼女は座った。 「みなさん、一宮さんと仲良くして下さいね。」 それだけ言って、担任は教室から出て行った。 クラスのヤツらは、一刻もはやく、この一宮陽和のところに来たいのだろうが、生憎俺が近付くなオーラを放っているせいで来られないのだろう。 その事に、彼女は気付いているのだろうか。 多分気付いている。さっきこいつも感じてたっぽいし。 それなのに、彼女は屈託ない笑顔で、俺に話しかけてくる。 「いやまくん、いやまくん。いやまくんってさ。どうやったら名前なの?」 それにしても。 こいつのこの質問はおかしくないか? 「……は?」 前へ |次へ |
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