《MUMEI》

今日は用事あるから先に行くなよって!!何で先に行くんだよっ!!」

これこそ正に、噛みつかんばかりの勢いとかいうやつなのだろうか。

「……あっ!忘れてた…………」

漸くその用事とやらを一宮は思い出したようで、苦虫でも噛み潰したみたいな顔をした。


「どぉすんだよっ!?しかもあんな早い時間に出やがってっ!!あんなの俺がまだ寝てる時間だろぉがっ!!」

肩で息をするカヅキと呼ばれる明らかに一宮と親しいことが窺える男。

余りの五月蝿さに苛々してきた。

「わ……私だってびっくりしたんだもんっ!!と……っ時計っ見間違っちゃったんだからしょうがないじゃん!?八時だと思ったら六時だったんだからっ」

そもそも、どうやったら六時と八時を見間違うのだろうか。


多分、これを思ったのは俺だけじゃない筈だ。

そろそろ俺の苛々がピークに達しかけた時だった。


「こら和月、あんた転校初日からなに極度のシスコンぶり発揮してんの。」

呆れ果てたとでも言いた気な声でカヅキを宥めるまたしても顔立ちの整った女が現れた。

ただ、さっきと違うことはコイツが、俺が知ってるヤツだって事。

「……げっ……澪(みお)っ」

カヅキは、彼女の顔を見るなり、心底嫌そうな顔をした。

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