《MUMEI》
復讐
気配も足音もしなかったのに、柊はそこに立っていた。




「柊……」

「Merry Christmas.私ね、月代君にプレゼントがあるのよ。受け取って」

「…プレゼント?」

「はい」



そう言って渡してきたものは、真っ赤な薔薇の花束だった。




「…っ!ふ、ふざけんな!いらねぇよ、こんなもん!!からかってんのか!?」

「からかってなんかないわよ。これは、お別れのシルシよ」

「な、何言ってんだよ!お別れって……」

「お別れでしょ?だって、明日から月代君はいないんだからさ」

「柊、お前…。やっぱり、智や椋の死に何か関係してるのか?」

「………」

「なぁ、どうなんだよ!!」




「……フッ…アハハハハ!!!」

「なっ!?」




俺の問いかけに暫く黙っていた柊は、壊れたように腹を抱えて笑いだした。それは、今までに聞いたどの笑い声よりも不快で、恐怖を感じさせるものだった。




「アハハ、そうよ。高岡 智も剣持 椋も私が殺してやったのよ!!!」





柊のその言葉に、俺は放心状態となった。予想していたこととはいえ、衝撃が大きすぎたのだ。俺はただ「何、で……?」という言葉を絞り出すので精一杯だった。
それに対して、柊は可笑しそうにクスクスと笑いながら答える。



「'何で?'って、分からないの?復讐だからよ」

「復、讐?」

「えぇ。3年前のね」

「3年前?どういう事だよ?」

「まだ思い出せないの?3年前のちょうどこの日、この公園で会ったのに?」

「………」





俺は、3年前のこの公園で柊に会っていたというのか?



3年前…


この公園……












……………!!







「も、もしかして……!」

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