《MUMEI》
意外な過去
その日の夜。


「薄情だと思うか?」


過去より、旦那様より


今を、友達の事を考える


俺を。


(責めるだろうな、忍は)


そう予想していたのに。


《別に、普通だろう》


俺の報告を聞いた忍は、俺を責めなかった。


《俺にも、覚えがある》

「どういう意味だ?」

《あの屋敷から、狭い環境から、広い環境に出て、…

旦那様を一番に考えなかった時期がある》

「忍がか!?」


(あの、旦那様第一の忍が!?)


俺は夜中である事を忘れ、大声を出していた。


《…昔の話だ》

「ちなみに、いつだ?」

《… …

小学生の時だ》

「それじゃ、仕方ないだろ」


小学生の忍は想像できないが


子供なら、仕方ないと思った。


《それでも、許される事と許されない事はあるがな》


そう、続けた忍は


俺を責めているわけではなく


どちらかというと


自分を責めているようだった。


《まぁ、俺の話はいい。

いくら友達の心配をしていても

その友達に恋愛感情は無いだろう?》

「それはない」

《なら、いい》


そして忍はいつも通り一方的に電話を切った。

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