《MUMEI》
拓磨との不毛なやりとり
「授業はどうするんだ?」

「少し位サボっても大丈夫だ」

「一時間目は、英語だぞ」

拓磨は一度足を止めた。


「… … … 大丈夫だ。英語ができなくても、生きていける」


(声、震えてるぞ)


これ以上拓磨を怒らせたくない俺は、心の中だけでツッコミを入れた。


そして、たどり着いたのは


(…暑い。ありえない)


炎天下の屋上だった。


「…早速嫌がらせか?」

「違う」


(…確かに)


拓磨は既に汗をかいていた。


「ここなら誰も来ないから」

「確かに、誰も来たくないだろうな」


俺も汗をかき始めていた。


「話があるなら、早くしてくれ。脱水症状にはなりたくない」

「お前、志貴さん好きか?」

「…は?」

「答えろ」


(それは…)


「友達として好きだ」

「ムラムラしないのか?」


(ムラムラって…)


「しない」

「お前、本当に男か!?」

「あぁ」


(不能だけど)


「信じられない…」


(そんな事言われても…)


「事実だ」

「信じられない」

「信じろ」


結局このやりとりは、拓磨が脱水症状で倒れるまで続いた。

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