《MUMEI》
結婚ラッシュ
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ケースの中には、レッドやブルーやグリーン…などの、色とりどりのストーンが入っていた。

ネイリストさんはストーンのカラーを選びながら、ぽつんと言った。

「この気持ちが、シットなのか、なんなのか、自分でもよくわからないんです。彼氏がいないことを、寂しい…とおもうときも、もちろんあるんですけど、でも、とりわけ欲しい!ともおもわない。実際、仕事が忙しくて、それどころじゃないですしね」

彼女は、アクアマリンのストーンを選び、ふたたびわたしの手をとった。筆でクリアジェルを爪にのせて、その上に小さなストーンを器用に並べていく。

「力仕事も、テレビの配線なんかも、結構自分ひとりで出来ちゃうから、心のどこかで、男のひとがいなくても平気っておもってるトコロがあるんですよ」

わたしはネイリストさんの方を見た。彼女は真剣な眼差しでわたしの指先を、きれいに飾り付けている。



彼女の言い分は、痛いほど、よくわかった。

わたしにも似たような経験がある。



去年の末、高校の友達が、長く付き合っていた相手と結婚した。その数ヶ月後には、別の友人が、ネイリストさんの友人と同じ、デキ婚で。

デキ婚の友人の披露宴に出席したとき、他の友達から、最近、彼氏と婚約したことを告げられた。
式に呼ぶからね、と幸せそうに話す友達の顔がすこし、滲んで見えたのは、気のせいだったのか。


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