《MUMEI》

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そうやって、3年の月日が過ぎた頃、限界がきた。


身体的にも精神的にもボロボロになったわたしは、ついに、退職した。

未練は、なかった。逆に、重い足枷が取り外されたような、すがすがしさすら、感じていた。

会社を辞めたあと、勝手に『リフレッシュ休暇』と称して、1ヶ月間プータローをして、今の派遣会社に登録して仕事を探した。
新しい仕事を見つけるのに、苦労はしなかった。大手化粧品会社に勤めていたキャリアがあったから。

担当の派遣コンサルタントのすすめもあって、現在、わたしは香水の販売にたずさわっている。





「別に、今その話しなくても、いいでしょ」

わたしが冷たく母をあしらうと、彼女はムッとしたようだった。そして、彼の顔を見て、呟く。

「尚、なにか言ってやってちょうだい」

わたしは、彼の顔をちらっと見遣った。彼−−尚は、すこし考えるように天井を見上げたあとで、わたしの顔を見る。

「こんどは、上手くやってんの?」

穏やかな声に、わたしは頷いた。すると、尚は、じゃあいいじゃないの、と軽い調子で母に言った。

「芽衣がそれで納得してるなら、問題ないだろ」

なだめるようにそう言ったが、母は不満だったようだ。すぐさま父の方を見て、声を荒げる。

「お父さんがビシッと言わないから、芽衣がだらけるのよ!!」

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