《MUMEI》

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学校でわたしとすれ違っても無視したり、家で一緒にいても、あからさまにわたしとの接触を避けているようなそぶりをした。

理由はおもいつかなかったが、なんとなく、わたしは尚に嫌われているのだ、と感じていた。


けれど、そういう《お年頃》なのだ。


わたしも中学にもなると、自然と視野が広がり、家族にべったりだった子供の頃に比べて、友達とつるむ方が多くなっていった。友人関係や、初めての恋に一喜一憂したり、それなりに忙しい日々を過ごしていた。

だから、尚との『距離』に関して、そんなに悩みはしなかった。


わたしが、急速に、尚の存在を意識したのは、高校に入ってからのことだ。


中学を卒業すると、成績優秀な尚は、進学校で有名な私立の男子校へ、勉強が苦手だったわたしは、適当な近所の共学校へそれぞれ進んだ。

ライフスタイルが完全に異なったわたしたちは、家族だというのに、ほとんど関わりあいのない毎日を過ごした。

わたしはわたしで、毎日が楽しかった。なぜなら、高校に入ってじきに、生まれて初めての彼氏が出来たから。

今にしておもえば、それはとても幼いお付き合いだったけれど、それでもわたしは満ち足りていた。


そして、時間は流れて、夏休みに突入した。


朝から両親は外出していて、家にいたのはわたしと尚だけだった。

午後から、例の初カレとのデートを控えていたわたしは、はしゃぎまくっていた気がする。

その日、尚は珍しくリビングにいた。

いつもであれば、食事の時間以外は部屋にこもりっきりの彼が、リビングのソファーで雑誌を読んでくつろいでいたのだ。

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