《MUMEI》

「ひーよーりぃぃぃ!!!!!お前ホントに帰って来てたんだなぁっ!!!!」

錦の言葉を遮るように、引き戸を叩き付ける音が教室中に鳴り響き、カヅキに引けをとらない程に顔の整ったヤツが入ってきた。

……全速力で。

彼の名は宇佐美 永久(うさみ とわ)。

宇佐美の顔は恐ろしいくらい整っている。
でも、同じ整っているでもカヅキとは根本的に違う。

カヅキは、何処からどう見ても男だが、宇佐美はどう見ても女の子。

制服のズボンが無ければ間違いなく女の子だ。


しかし、だ。
そんなことはどうでも良い。

たかが十分程度の休憩が、これ程に長く感じられるものなのだろうか。

もう、二、三十分は経過しているような気がする。

………とそんなことを考えていると目の前で、宇佐美が一宮に抱きついて………

俺の頭と一宮の頭が衝突。


ゴンッ ………

「………っ!?!?」

鈍い音がして、俺に悲劇が襲いかかり、教室にいた、全ての者が言葉を失う。

「「あ………」」

錦とカヅキの声がハモる。

「……へ?」

そんな間抜けた声をあげたのが悲劇を巻き起こした張本人である宇佐美。


ブチッ……

俺の中の何かが切れる音がした。

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