《MUMEI》

「ぃゃ──そうとも限らないぞ?」

「何で分かるのよ」

「だって──」

「だって?」

「ほら──もしかしたら」

「そんなの‥‥‥」





言いかけた那加が、立ち止まる。





「どうした?」

「──あれ」

「?」





那加が指差した方を見る。





何かが、路地に入って行くのが見えた。





「行こっ、日向」

「ぅわッ」





今まで引っ張る側だった俺が、引っ張られる側になる。





「──いたっ!」

「‥!?」





那加がいきなり立ち止まったもんだから‥つんのめりそうになった。

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