《MUMEI》
アドバイス
「一度初心に戻るのも、ありじゃない?」

「俺、初恋母さんの友達で、結婚済みなんだけど…」

「そこまで戻る必要無いから」


志貴は、呆れながら続けた。


「二人の最初の印象って意味」


(最初って)


俺の記憶が確かなら


石川に対しては『小さな女の子』で


松本に対しては『大人しい女の子』


のはずだ。


(どっちも、よくも悪くもないはずだ)


しかし厳は


しばらく考え込んだ後


「…そうか」


スッキリした顔をしていた。


「ありがとう、志貴!」

「どういたしまして」


出ていく厳を見送り、俺達三人は教室に戻る事にした。


「さすがです、志貴さん」

「さすがなのは、志穂さんよ」

「「…へ?」」


(何で、志穂さん?)


俺と拓磨は珍しく同時に首を傾げた。


「昨日、うちのお店に買い物来た時に、厳の話になってね。

その時もらったアドバイスなの、あれ」





(本当に、困った時は志穂さんなんだな)


それが高山家では普通だとわかっていても


(やっぱりすごいな)


毎回感心する俺がいた。

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