《MUMEI》
仕組んだ者
昼間だと言うのに、カーテンを閉めきり、電気も付けていない真っ暗な部屋の中、唯一モニター画面がボウっと薄暗く光を放っている。

それが、怪しく口元に笑みを浮かべる修二の顔を照らしていた。

「どうやら記憶が戻ったらしいですね。」

まるで笑いを堪えるかのような声で、後に座っている男に言う。

「どうしますか?ドクター。」
すると、後のソファーで踏ん反り返っていた男がスッと立ち上がり、ドスの効いた低い声で答えた。


『実行だ。』


それを合図とするように、修二は携帯電話に手を延ばした。

「待って、修二。私も一緒に行かせてよ!」


番号を押そうと文字盤に指を触れた時、急に待ったを賭けられて、イライラした口調で修二は言い返す。

「我が儘言うな!これは決定事項だ。言わばドクターのご意思だぞ?お前、それを無視すんのかよ!?」

かなり強い口調で言ったつもりだったが、どうやらこの女には通用しないようだ。

「だってぇ、あの二人の驚いた顔、直に見たいんだもの〜。ねぇ、いいでしょ?ドクター。」

甘ったるいまでの猫撫で声で女はお願いする。


『まぁいいだろう。それも面白い…』

「やったぁ!有難うございますっ!」


修二はそれに対して不満一杯の顔をする。


『何か不満でもあるのか?』

それを見た男はギラリとした目を修二に向けた。

「いえ…。何でもありません。」


本当は不満だらけだが、こうもドクターに睨まれちゃ言い返せねぇ…
ドクターは絶対だ!!


「お前…ヘマすんじゃねえぞ!!」

修二は代わりに女の方を睨み付けて、その憂さを晴らす。

「わかってるって!フフッ…早くあの子達に“裏切り”っていう言葉、教えてあげたいわ。」


女の不適な笑みを無視して、修二はもう一度携帯に手をかけた。

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