《MUMEI》
厳の選択
その日の夜。


(よっぽど身の危険を感じてたんだな)


優柔不断な厳にしては珍しく、早速行動を起こした。


ただし、厳がどちらを選んだのか、俺は未だに知らない。


厳は、ここに


高山本家に


見極め人である俺と


石川・松本の両名を招いたのだ。


そして、俺達四人の目の前には


果穂さんと、大志さんがいた。


「じゃあ、発表してもらえる?」


果穂さんの言葉に、厳は頷いた。


「俺が選んだのは



彼女、だよ」


そう言って厳は


この中で一番小柄な女の子


石川くるみの肩を抱き


自分の方へ引き寄せた。


「わ、私で本当にいいの!?」

「あぁ」

「本当に?」

「本当に」

「本当の本当に?」

「本当の本当に」

「本当の本当の本当に?」

「本当の本当の…」


「「いい加減にしなさい」」

「いい加減にしろ」


いつまでも続きそうなやりとりに


松本以外が、終止符を打った。


「…」


松本は何も言わずにうつ向いていた。

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