《MUMEI》
自分らしさ
見る度に、松本の化粧が濃くなっているような気はしていた。


ついでに


制服の着こなしも、厳の好きそうなギャル系になっている気がしていた。


それが、厳に好かれる為だとわかっていたし


正直、それなりに似合っていたからいいと


この時まで、俺は思っていた。


「やっぱり美鈴はその方が可愛い」


厳が言うように


ナチュラルメイクの松本は


バッチリ気合いの入ったメイクの時より可愛かった。


『ナチュラルメイクは、手抜きメイクじゃなくて、自然に、自分らしさをいかすメイクの事だから』


(こういう事を言ったんだな)


不意に、志貴が以前力説していた言葉を思い出した。


「美鈴が、俺の為に一生懸命なのは嬉しかった。

明るくなったりしたのは、成長だと思う。

でも

無理しちゃ、ダメだ。

俺は

相手の男は楽だから、甘えちゃうけど

自分らしさを消して

殺してまで、合わせちゃ…

ダメだよ。

そのままの美鈴で十分魅力的なんだから

そのままの美鈴を愛してくれる人じゃなきゃ

俺じゃ、ダメだよ」


「… … うん」


松本は、今度は泣かずに頷いた。

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