《MUMEI》

「あれってまさか」
追撃隊かと聞こうとしたユウゴだったが、その答えは聞くまでもなかった。
黒いトラックの背後から武装した紺色の服の男たちが走り出てきたのだ。
彼らは列をなすと、揃った動きでこちらへ向けて銃を構えた。
「やばい。織田、車出せ!」
ユウゴが怒鳴ったと同時にエンジンが吹き上がり、車は急発進する。
大きく車体を振らせながら、織田はトラックの方へと進行方向を定める。
すると外から発砲音が響いてきた。
「ケンイチ、伏せろ!」
言いながらユウゴは座席の間から前方を確認した。
すぐ目の前に追撃隊が迫り、やがて何人かがフロントから屋根へと跳ね上がっていった。
瞬間、織田がハンドルを左へと切る。
ユウゴはほとんど前の座席と後部座席の間にはまるような体勢になりながら前方を見る。
織田はトラックと壁の間から走り抜けようとしているのだろう。
限界まで踏み込まれたアクセルに唸りをあげるエンジン。
スピードは見る間に上がり、そのまま狭い隙間へ走り込んだ。
全身を叩きつけられるような衝撃とガラスか何かが割れる音、そして頭が割れるような低く重たい音が響く。
一瞬、停まってしまったかと思った車は、何かを引きずる音と共に再びスピードを上げた。

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