《MUMEI》
発端
 事の発端は球技大会だった。
7月某日、毎年恒例、夏の学年対抗球技大会が開かれた。
学年毎に日にちをずらして行うこの行事は、期末テストが終わり開放感に酔い痴れたい生徒の為に企画されているもので、先に三年生、次に二年生、そして最後に一年生の順に行われる。
競技は、女子と男子で違う。
男子はサッカーとバスケ。
女子はバレーとテニス。
半分に分かれてそれぞれの競技に取り掛かる。
 その日は三年生の球技大会で、俺はバレーの選手として参加していた。
テスト勉強で鬱屈した気分を存分に晴らしていた俺は、良くもない運動神経をフル稼動させて準々決勝まで勝ち進むに至った。
飽くまでも、クラスメイトのお陰ではあるのだが。
 「カヨ、いつにもなく頑張ってるねえ。どういった心境の変化?」
試合待ちの間に隣のクラスである3組の岬 紗夜(ミサキ サヤ)が、額の汗をハンドタオルで拭いながら近付いてきた。
彼女は揶揄うように告げて許可もなく俺の隣に腰を降ろす。
紗夜は去年のクラスメイトで、吹奏楽部に所属している子だ。
そして、8月中旬にある合唱コンクールの伴奏を快く引き受けてくれた神様のような女の子だった。
そう仲は悪くない。

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