《MUMEI》
見捨てた
「あぁ゛?ウゼーんだよ。てめぇらには関係ねぇだろ」

「関係なくたって、その人は嫌がってるだろ!放せよ!!」

「うっせーよ!!怪我したくなかったら、どっか行け!!」





そう言ったのと同時に、その男は俺を殴った。何の準備もしていなかった俺は、そのまま地面に倒れ込んだ。





「黎夜!大丈夫か!?」

「サツには連絡すんなよ。もし連絡したら、3人共病院送りだからな?バレないなんて考えは間違っても持つなよ。分かったらとっとと失せろ!!」





ここまで言われてしまっては、当時中学2年生だった俺達に成す術などなくて、引き摺られて行く彼女を横目に、歩き出すしかなかった。





「嫌っ!行かないで!!助けて!ねぇ、お願いだから!!!」

「……っ」

「イヤァァァァァァ―――!!」




俺達はその泣き叫ぶ声を振り払うかのように、全力で走ってその場を去った。


警察にも行けないし、助ける事もできない…。


それは、彼女を完璧に
見捨てるということを
意味していた。

怪我をしてまで見知らぬ人を助けることなんて出来ない。病院送りだけでは、済まないかもしれないし。

そんな思いがめぐるなか、俺達はそれぞれ帰宅した後、眠れぬ夜を過ごした。








そして翌日の朝、俺達が見捨てたことによって、彼女に取り返しのつかない事が起きていないかが心配で急いでニュースを確認したが、それらしいものは何も無かった。




最初のうちは、3人であの女子がどうなったのかという事について話したりもした。

しかし、時が経つにつれて3人共あの出来事について何も語らなくなり、忘れていった…

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