《MUMEI》
俺も彼女には一目置いている。
体育館のステージ上から、他クラスの試合を見下ろして俺は言ってやった。
「俺、運動神経はないけれど。悔しそうに歪む人間の顔を見るのは大好きなんだ」
「何よそれ! 相変わらずのSっぽい発言有り難う。でも、次に歪むのは、アンタのその顔よ。勝つのは3組だから」
紗夜は可笑しそうに目元を和ませて笑う。
女の俺が言うのも何だが、紗夜は綺麗な子だ。
背中の中程まで伸びた真っ黒な艶のある真っすぐな髪。
小さな顔の中に収まる部品(パーツ)は、どれもちょうど良い位置にある。
色白の肌は、俺には眩しかった。
性格もサバサバしていて付き合いやすい。
これは俺の私見だけども。
以上により、この紗夜という人間は男女問わずモテる子である。
去年転校してきた俺は知らないのだが、一年生の頃は、現在高等部2年に通っている天才少女と噂の愛河 舞(アイカワ マイ)と並んで人気を博していたとか。
とにかく、凄い子なのだ。
だからなのか、紗夜といると時折妬まれることがある。
馬鹿らしいので相手にしたことはないけれど、多分相手にすれば、それはそれで面白いのだろう。
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