《MUMEI》

ゴクッ

それと同時、何処からともなく、息を飲む音が聞こえた。

「……っなんなんだよっ!お前らはさっきからっ!!」

思わず怒鳴ってしまった。
「わ……わりぃ……えっとい……伊山?」

宇佐美は、おどおどし始めて、俺の様子を窺ってる。

「ごめん……あの……伊山くん……痛かったよね……」

一宮までおどおどし始めて、妙な雰囲気になってしまった。

「ま、まぁ三人とも……」

なんとか俺を宥めようと、錦が口を挟んだ。

ムスッとそっぽを向いた俺を気まずそうに宇佐美たちは見て、顔を見あわせた。

それと同時に、授業開始のチャイムが鳴って、一宮以外は各々の教室へと帰っていった。

結局、アイツらの関係性は分からず仕舞いだった。
特にこの、陽和と和月の関係性は。

ただ、この出会いが、俺の運命を変えてしまう事を、この時の俺はまだ、微塵も思っていなかった。


そうこうしている間に教室に小笠原が入ってくる。

「あら?みんなどうしたの?今日はえらく静かね。」

不思議そうな顔をして、算数の教科書を開く。

「あのさ。さっきは本当、ごめんね。」

申し訳なさそうな声が隣から聞こえた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫