《MUMEI》

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戸惑うわたしに気づかずに、あかねさんは軽やかに笑いながら、尚を軽く睨んだ。


「まったく、どこがどこにでもいるようなフツーのコなのよ。芽衣ちゃん、すっごい美人じゃない」


ウソばっかり、と呟きながら、彼女は尚の肩を馴れ馴れしく、叩く。そう、とても親しげに。
そして、尚は、あかねさんの顔を見て、優しく笑っていた。

そのふたりの空気が、とても強い繋がりを思わせるようで、わたしの心は、酷く、ざわついた。


「でも、芽衣が美人じゃないとは言ってない」


「あ、シスコン発言!あの噂、ホントだったのね」


「なにそれ、噂ってなんだよ」


「知らないの?高木くんも、山下くんも言ってるわよ。『アイツはシスコンだから、一緒にいても幸せになれないぞ〜』って」


「なんだよ、あいつら。ヒガミかよ」


「ホントのことでしょ?」


「もういいよ、別に。シスコンで」


「もぉ、開き直らないでよ〜」


尚とあかねさんは、わたしの存在を忘れてしまったように、楽しげに会話をつづけた。
わたしが知らない話題で盛り上がり、笑い合うふたりは、なんだかとても、幸せそうに見えた。


いたたまれなくなったわたしは、彼らの会話を遮るように、言った。


「話って、なに?」


つい、声が、尖ってしまった。そのせいで、ふたりは話すのを止め、ハッとわたしの方を見る。

一気に視線が集中し、わたしは怯んだが、それでも、もう一度尚の顔を見て、尋ねた。


「話が、あるんでしょ?」


わたしの台詞に、ふたりはバツが悪そうな顔をして、黙り込み、俯いた。

無意味に沈黙が訪れる。

話をするタイミングを計っているように見えた。

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