《MUMEI》

「何言ってんだ、勝つのは我等が4組に決まってんだろ? 何せ、この俺がいるんだからさ」
勝ち誇った顔で返してやれば、馬鹿ねと紗夜が呆れたように呟いた。
「アンタがいるから4組は負けるの。自分で運動神経ないこと認めたじゃない。アンタは4組の穴なのよ」
「うお、其処まではっきり言うのか! カヨちゃんは深く深い傷を負ったぞ、畜生め」
「勝手に傷付いてなさいな。ホント、カヨは飽きないなあ。可愛い可愛い」
紗夜の手が俺の頭を撫でる。
癖っ毛で色素の薄いその髪は、教師の標的になりやすくて面倒なものでしかない。
それでも、紗夜に優しく撫でて貰えるのは好きだから、この時だけはこんな髪で良かったと思うのだ。
因みに、俺等はS気質同士で、S度は紗夜の方が上だったりする。
ただ単に勝ち気なだけとも言うのだが。
「紗夜に可愛いなんて言われたくないやい。美少女に可愛いと言われる平凡女の惨めさが、お前に解って堪るか!」
ステージの上で膝を抱え、床に「の」の字を書いていじけてみせる。
体育座りなど何年振りだろうか。
案の定、S女、元い、紗夜はケラケラと床を叩いて豪快に笑い飛ばした。

前へ |次へ

作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ

携帯小説の
(C)無銘文庫