《MUMEI》
「何よ、その似合わないM仕様は! 良いじゃない、アンタは性格が可愛いんだから。それに、私はカヨの顔、好きよ?」
しかも、俺の体に腕を回してギュッと抱き締めたりする。
ギャラリーが騒がしくなるではないか、と軽く睨めばその端正な顔は玩具を前にした悪餓鬼仕様になっていた。
詰まりは、確信犯だ。
彼女は、紗夜シンパに虐められる俺を心から愉しんでいるのだ。
「……俺も、紗夜の性格好きだ。時々、目茶苦茶ムカつくけどな」
悔しいので顔を逸らした。
紗夜の顔は綺麗で、だからこそ見たくない時がある。
耳元で囁かれる言葉があれば、俺は満足だった。
「ふふ、有り難う。私達、同じ性癖なのに相性バッチリよねえ。私のペットにならない?」
「って、既にそれに近いと思うのは俺の気のせいか?」
そっ、と片腕を紗夜の肩に回す。
顔は見ないまま。
温もりだけを欲して。
「気のせいじゃないわね。カヨはいつまでも、私の可愛いペットよ?」
甘えん坊なんだから、と紗夜の吐息が告げて、更に強く抱かれる。
「噛まれないように気を付けな。ほら、試合見ようよ」
紗夜の腕の中は心地良かった。
けれど、温もりに溺れられる程に俺は弱くない。
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