《MUMEI》
春日さんの眠る場所
春日さんの墓は、とても綺麗で、備えてある花も、枯れていなかった。


「毎日誰か来てるからね」


『俺が一番来てるけど』


照れ笑いを浮かべながら、葉月さんは俺に線香を渡してくれた。


(失敗したな)


墓参りをした事の無い俺は、墓参りに何を持って行くか知らずに


手ぶらで来てしまった。


(忍に聞けば良かった)


墓参りに誘われたのが嬉しくて、忘れてしまった。


「田中君?」

「あ、すみません。ここに置けばいいんですよね?」

「うん」


俺は、慌ててしゃがみ、線香を横にして置いた。


「近況報告でもしてあげて」


(近況…)


俺は、手を合わせながらしばらく考えた。


最近の俺は、比較的穏やかな日々を送っていた。


だから


(普通の毎日過ごしてます)


そう、春日さんに報告した。


そして、生前春日さんが暮らした家に


今は、葉月さんと美緒さんが暮らす家に向かった。


「先に入ってくつろいでて」


そう言って、葉月さんは美緒さんを迎えに空港に向かった。


(開いてる…不用心だな)


葉月さんから借りた鍵を使う事なく俺は中に入った。

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