《MUMEI》
鍋奉行
「「あれ? 言ってなかったっけ?」」

「田中君が来るのは知ってましたが、いつ来るかは聞いてません…」

「じゃなきゃヤッて…」

「肉食え祐!」

「おぉ、さっき体力消耗…」

「いいから黙って食え!」


(葛西先輩…苦労してんな)


「葉月さんは、野菜も食べて下さいね

あ、美緒さん、豆腐それで終わりですから!

田中君も、もう少し食べて」

「あ、はい。ありがとうございます」


(そしてお母さんのようだ)


よくわからないけど、母親はこんな感じかと思いながら


俺はバランス良く鍋の具が盛られた器を受け取った。

ちなみに、この鍋もサラダも、そして漬物も、葛西先輩の手作りらしい。


「祐、出番無いな」

「家庭料理は完敗。本格中華なら勝てるけど。

それに、人に作ってもらえるのは楽だし嬉しいから、悔しくないし」

「そっか」

「うん」


そして祐は、肉を取ろうとし


「お前も野菜食え!」


完全に食卓の主導権を握っている葛西先輩に怒られていた。


その夜忍にその事を報告すると


『そういう奴を、別名鍋奉行と呼ぶ』


と、教えてくれた。

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