《MUMEI》
「賀さんが言うように、岬さんは気にすることないのよ? まずは怪我を治すことに専念なさい。それが皆への償いになるわ。じゃあ、行きましょうか。賀さんは体育館に戻ってね」
紗夜はもう一度頷いて振り向いた。
目の縁が赤くなっていたが、泣いてはいない。
俺は安心して保健教諭に対し素直に返事をする。
「はい、解りました。紗夜、俺もう行くけど。大丈夫?」
紗夜は、馬鹿ねと小さく呟いて笑った。
「私がこのぐらいでへこたれるとでも思ってるの? 私は平気よ。さっさと行きなさい。どうせアンタのことだもの、黙って来たんでしょ?」
「……ご主人様は復活が早いなあ。ペットめは退散しますよーだっ」
紗夜の頭を小突いて背中を向ける。
俺は保健室を抜け出し体育館に戻るのだった。
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