《MUMEI》
駅前で待ち合わせ
駅前は、深夜でも人が多かった。


「こんな所に来てどうするんですか?」


駐車場に車を停め、歩き始めた美緒さんを追いかけながら、祐は質問した。


その口調も表情も、明らかに先程より不機嫌だった。


(まぁ、俺も人混みは苦手だけどさ)


「そういえば、美緒さんは堂々と歩いて大丈夫なんですか?」


多くの視線を感じ、俺は美緒さんが有名人なのを思い出した。


「平気。私は葉月ほど顔出してないし」

「でも視線…」

「それは田中君だから」

「いい加減、自覚しろよな」


(そんな事言われても)


地元ならともかく、こんな離れた土地で注目されるとは思わなかった。


「せっかく本人じゃなくてマネージャーさん呼んだけど、意味無いかもね」

「「マネージャー?」」

「今回の依頼人の、ね。一応駅にある一番大きな本人のポスターの前で待ち合わせなんだけど…」


美緒さんの視線の先には


巨大ポスターと


…人だかりがあった。


「マネージャー、ですよね?」

「の、はずなんだけど…本人気まぐれらしいし…」

「て、本人て」


祐はポスターの男を見て、目を丸くした。

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