《MUMEI》
ポスターの男
ポスターは、人だかりのやや後ろにいる俺達からも見る事ができるほど巨大だった。


『ずっと、同じ、香り』


そんな文字の隣にいるのは、香水の瓶を手にし、微笑んでいる男


男女兼用と言っても、香水が似合う男は多分少ないだろう。


しかし、男は本当に違和感なく


ポスターなのに、色気が感じられるほど、綺麗だった。


そんな男の名前は高遠光(たかとおひかる)というらしい。


そして、祐が驚く程の


売れっ子で、大人気の芸能人らしい。


「こんな大物が、何で雅樹を? まさか、身体目当てとか…」

「それは無いだろ」

「だ、だって芸能界ってそういうの多いらしいし…」

「そうなのか?」

「あのねー、全く無いとは言わないけど、今回は違うから」


芸能界をよく知らない俺は、祐に流されそうになったが、最終的には美緒さんの言葉を信じる事にした。


(…ん?)


冷静になって、もう一度ポスターを見た俺は、ようやく気付いた。


人だかりの中心にいる、頭一つ飛び出た金髪に。


ポスターにうつる高遠光に寄り添うように立っている金髪は


高遠光とはまた違うタイプの美形だった。

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