《MUMEI》

.

クラス中の視線を全身に浴び、緊張でどうにかなりそうだったが、わたしはゆっくり、小さな声で、呟いた。


「中塚 寧々です。今日からお世話になります。よろしくお願いします…」


尻すぼみになりながらも、なんとか最低限の挨拶を済ませ、ホッとする。

わたしの挨拶を聞いた先生は、なんだか物足りなそうな顔をして、それからなにか思い付いたように、生徒達に向き直った。


そして、凍りつくようなことを言う。


「せっかくだから、中塚さんに質問したいことがあったら、聞いてみましょうか〜」


先生の呑気な台詞に、わたしの顔が引き攣った。



質問?

なにそれ、冗談じゃない!



わたしが先生に反論しようとした、その瞬間、



今まで黙っていたクラスメイト達が、一斉に騒ぎ出した。


「どうしたら、そんなにキレイになれるんですかッ!」


「趣味はなんですかッ!?」


「使ってるシャンプー、教えてください!!」


「『お姉様』と呼んでもいいですかッ!?」


キャアキャアと黄色い声が教室中に響く。その理解不能な質問に、わたしは呆気に取られた…というよりも、怯えた。


.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫