《MUMEI》

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…………なんなの、このひとたち。



クラスメイトが勝手にヒートアップしていく中、ひとりの女の子が、ゆっくりと、挙手した。

天井にすらりと伸びる、その華奢な腕を見つけ、先生が呼びかけた。


「小田桐、どうした?」


先生の声に、クラスが一瞬静まり返った。みんながその彼女に、視線を向けたので、自然とわたしもそれを追った。

『小田桐』と呼ばれた彼女は、印象的な大きい瞳で、わたしの顔をじっと見つめてきた。色白で、キレイな顔をした子だった。彼女の長い黒髪が、サラサラと儚く揺れていた。

彼女は、ニコリともせず、わたしを見つめたあと、

淡々とした抑揚で、言った。



「どうして、今の時期に転校してきたんですか?」



とりわけ、他意があるような言い方では、なかった。ただ、なんとなく、聞いてみた、という感じだった。


けれど、わたしは、一瞬、息が詰まりそうになった。


こんなところで、こんなふうに、転校の理由を聞かれるなんて、想像していなかったから。





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